2021年度の東京都生活文化局「東京都在住外国人助成事業」にひとりとみんなの取り組みが採択されました。東京都在住外国人支援事業助成|東京都生活文化局 (tokyo.lg.jp)
写真等をご覧ください。
この事業(取組)は、不適応にある介護留学生を日本語学校、介護福祉士養成校、施設が連携しプラットホーム(共同の支援する場所)をつくって、そこに心理臨床や精神保健などの専門家も加わり、重層的で複眼思考の支援を展開しようとするものです。
スケジュールは、9月に事業説明と「不適応」の実際の勉強会。10月には厚労省社会・援護局地域共生担当係長 田代善行氏による「外国人との地域共生 我が事丸ごと」のキックオフ講演会をすべての方々にオープンで開催。11月からは日本語学校、養成校、施設の方々による事例報告と心理や精神保健の専門家による留学生本人への面接、それらを踏まえての総括検討を2月まで行い、3月には報告書提出、報告会の段取りです。
本会がかかわった留学生にも次のような不適応を呈するものがいました。
危機的状況化の学生への支援
5事例の説明
留学生A 数度の入管への再申請により査証交付、2020年1月入国。その後、コロナ禍で日本語学校へ通学することに恐怖を感じ、巣籠が続く。またアルバイト先施設において、認知症高齢者とのコミュニケーションギャップが引き金になり、帰国を表明、現在、待機中。法人としては本人との面談、支援施設との協議、本国の保証人との本国日本語学校を通じての話し合いをサポート。
留学生B 日本語学校卒業時、進路先の養成校が見つからない状況。法人の様々なルートで都内養成校への進学。その後、法人内寄宿舎での同室との関係悪化。不安定状態惹起。施設と共同して面接を行い、安定を取り戻す。
留学生C 1年目の日本語学校終了後、別の日本語学校への再度の進学を決定。また本人は、将来は介護をしたくないという申し出もあり、支援法人の支援終了。その後、本人から再度介護をチャレンジしたいとの申し出があり、法人のルートで支援施設を紹介。しかし最終的に、介護にはいかないと話、法人の支援も終了。この間新旧施設、日本語学校との面談を頻回に行った
留学生D N2取得できるほどの学力はあり。日本語学校への遅刻や施設での突然休暇をくり返し、本年5月に、施設、養成校、本法人また本人参加で検討会議。その会議に心理臨床の立場から臨床心理士の参画。この後状態は改善されたが、施設と本人の感情的な強い食い違いがあり、施設が支援終了を申し出。状況を総合的に考え、法人が次の支援施設を探す。本人への危機直面面接を行う。現状は安心感を得て、落ち着いている。
留学生E ベトナムでの面接時から、応答などに違和感があり、出国に難を示していたが、ベトナム側の事情により、入国、日本語学校入学。施設での支援ではなく、保護者の支援とアルバイトによって生計を維持。その後、本人からも介護で働きたいという申し出もあり、施設を紹介。しかし、欠勤も多く、養成校も休みがち、授業にもついていけない状態。本人との面談を繰り返したが、最終面談では、「自分が本当は何をしたいのかが分からない」と。修学資金は返済し、自費対応。施設での支援んも8月末をもって終了
・不適応状態の学生の課題
・本人資質が問題か
この議論は跋扈する。しかし、彼らの問題の背景には、文化の理解、彼らの家族関係の問題などの心理社会的な状況を理解する必要があるにもかかわらず、ここに切り込む支援がなされていない。経済的ギャップを見過ごすことはできない。
・施設の支援体制の問題か
ここに切り込む議論が必要ではないか。残念ながら、現実として、彼らの文化を理解しようとする体制も整ってはいないし、また心理や教育の専門職との連携も弱い
・養成校の問題か
残念ながら、様々な困難をもつ留学生への教育保障や合理的な配慮が正義されているとは言い難い。昔のような留学生=優秀でしっかりとした目的を持った学生というステレオタイプではなく、養成校にいる多くの困難にある日本人と同じく、その解決の場とツールが必要。
◎結論
現在の表出される問題は、ある意味構造化と相互の作用の結果であり、留学生に関わる3者が対等な立場で平場で語り合う必要があり、この中で様々な専門職との交流をしながた支援の多角化と多様性を醸成することが強く求められている。(勉強しない留学生だけが悪いでは済まない。背景にある介護人材の不足という問題を考慮に入れないことはあり得ないのではないか) そこで今回、不適応にある留学生に事例検討を行いながら、何が問題なのかを同定し、またどのような解決策があるかを、先駆的事例や成功例また図らずも成功に導けなかった経験を共有し、新しい時代の外国人介護人材の安定的修学と就労の枠組みを構築する。
昨日の第一回会議では、日本語学校、養成校、施設の方々など全体で20名程度の皆様にZoomでお集まりいただき、2時間弱の議論をいたしました。
中でも西日本の養成校から出された事例は、介護留学生(ばかりでなく、アジアからの留学生も含まれる)の典型的な不適応事例かなと思い、みなさんが熱心にお話をしてくださいました。
その事例ですが
■不適応状態の学生についてのケース
【事例1】「犯罪グループへのかかわり」 Aさんは日本で日本語学校卒業後、入学してきた学生である。エージェントと契
約している。
特に目立つというわけではないが、明るく友達とも仲良くやっているという印象
であった。
Aさんの日本語能力はN5で、読むことに関しては、平仮名やカタカナ、日常生活
で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章は読んで理解する
ことができる。聞くことに関しては、教室や、身の回りなど、日常生活の中でも
よく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取と
ることができる。但し、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読ん
で、理解することは困難である。よって、学校での授業内容や、教師からの指示
等を理解することに困難さが目立った。
養成校では日本語能力の向上のため放課後週2回、日本語教師による補習をおこ
なっていたので、担任らはAさんに補習に参加するよう促したが、Aさんはアルバイトを理由に参加しなかった。
入学して3か月程度経った頃から、Aさんに無断欠席が目立つようになり、担任
らは朝電話をかけたり、自宅に迎えに行くなどして登校を促した。他にも、個別
面談を行った。その際Aさんは「特に悩みはない。学校は楽しい。」と話してい
た。ある日、近隣の衣料品店から、「Aさんが衣類を万引きした。引き取りに来てほしい。」と学校に電話があった。学校はエージェントに連絡し、両者で店に赴き謝罪して警察沙汰にならずにすませた。Aさんも深く反省している様子であった。その数日後、再び無断欠席したので担任が自宅に様子を見に行くと、Aさんは不在で、室内はもぬけの殻になっていた。その後、あらゆる方法でAさんを捜したが行方不明で、入国管理局に届け出た。同級生によると、Aさんはフェイスブックを通じて犯罪組織に関わり、万引きした品を転売して利益を得ていたということであった。
【事例2】「発達障害が疑われる学生への対応」
Bさんは入学当初より、忘れ物が多く、授業中落ち着きがなく、注意散漫なところが見受けられた。具体的には、次のような課題がある。
・レポートの提出日や先生との面接など、大事な約束を忘れる。遅れてやってく
る。
・スケジュール管理ができずに、学習が進められない。レポート提出に間に合わ
ない。
・演習や実技の際、人から良く見られたいがためにうまくいかないことがある。
・整理整頓できずに、忘れ物が多い。
・メモやノートをとらない。
・先生や学生とのコミュニケーションがうまくいかない。
・予測できないことがあると対応できず、パニックになる。
・面接が苦手である。
・金銭管理ができない。
ゆえに、学校においては学業不振、グループワークでの課題、クラスでの孤立化
。就労においては、エージェントとの信頼関係に亀裂が生じて契約を破棄され、
自身でアルバイト先を探すが、それも長続きしないため経済的困窮をまねいてい
る。教員の中には、単純にやる気が無い、注意力・集中力に欠けるという理由で、本人に厳しく注意し、時に行き過ぎた指導をする。また、別の教員は、発達障害の可能性を考えながら、学生と個別に話し合い「大丈夫か」、「なにか困ったことはないか」と声をかけ、一緒に考えるよう教育的配慮を行っている。
いずれにせよ養成校として、支援の窓口や担当者が明確ではないこと。教員に障
害特性への理解が不十分であること。他機関との連携が皆無であることが課題で
あり、そのため学生が休学、退学、引きこもり等の状態に至る可能性があると考
えている。
これらの事例は特別なケースではなく、日本のどこにでも起きていると考えるべきでしょう。 これらのケースは、すべてを留学生の問題に帰して終了というものではなく、日本の留学システム、留学生の経済的問題(貧困が背景にあり、留学がある種の出稼ぎになっている)や支援のスキルなどが絡む形で問題が引き起こされていると考えるべでしょう。
これらの問題を優秀なそれぞれのステージにある機関が点としての支援で終わっていたものを、線にし、面にする。
こういう取り組みの第一歩にしたいな思っています。
なお10月は先ほどもいいましたが、厚労省の田代係長の講演です。
どなたにも開放しています。
詳細はこちらに問い合わせてください。
URLなどをお知らせします。参加費は無料です。なおZOOM開催ですのでご準備できるかたのみとさせていただきます。